シェイクスピア

1564 - 1616

シェイクスピアについて

 ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)は、イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物です。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、もっとも優れた英文学の作家とも言われています。また彼の残した膨大な著作は、初期近代英語の実態を知るうえでの貴重な言語学的資料ともなっています。
 シェイクスピアは、イングランド中部のウォリックシャーのストラトフォード=アポン=エイヴォンで生まれました。1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍しています。1613年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇『ハムレット』『マクベス』『オセロ』『リア王』をはじめ、『ロミオとジュリエット』『ヴェニスの商人』『夏の夜の夢』『ジュリアス・シーザー』など多くの傑作を残しました。『ヴィーナスとアドーニス』のような物語詩もあり、特に『ソネット集』は今日でも最高の詩編の一つとされています。

(シェイクスピア別人説)
 自身に関する資料が少なく、手紙や日記、自筆原稿なども全く残っていません。また、法律や古典などの知識がなければ書けない作品が多いことは学歴からみて不自然であることから、別人が使った筆名ではないかという主張や、「シェイクスピア」というのは一座の劇作家たちが使い回していた筆名ではないかという主張が、昔から多く見られました。
 真の作者として推定された人物には哲学者フランシス・ベーコン(哲学者ニーチェもそう断定しています)や第17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアー、同年生れの劇作家クリストファー・マーロウ、シェイクスピアの遠縁にあたる外交官ヘンリー・ネヴィルなどがいます。
 日本の英文学者では、まともに別人説を取り上げる人は見当たりませんが、河合祥一郎は別人説を否定するための著書を出しています。全戯曲を翻訳した小田島雄志は、資料が残っていないのは他の人物も同様である、シェイクスピアは大学に行かずエリート意識がなかったから生き生きした作品が書けたのだと別人説を一蹴していますが、このような情緒的、感覚的な主張は返って別人説に力を与えかねません。事はそう簡単ではないように思われます。
 実際、2016年には、フロリダ州立大学のゲイリー・テイラーらが、ビッグデータにより社会方言や言語習慣を検証した結果、ヘンリー六世などの17作品がクリストファー・マーロウとの共作であるとの結論を得たということです。

シェイクスピアの作品