平安時代の奇書「堤中納言物語」より「虫愛づる姫君」を平易な現代語訳付きで収録
この本について
虫愛づる姫君(堤中納言物語)について
堤中納言物語は、日本の平安時代後期以降に成立した短編物語集です。
作者、編者は不詳です。十編の短編物語および一編の断片からなりますが、成立年代や筆者はそれぞれ異なっていて、遅いものは十三世紀以後の作品と考えられています。
十編の物語の中のいずれにも「堤中納言」という人物は登場せず、この表題が何に由来するものなのかは不明です。複数の物語をばらけないように包んでおいたため「つつみの物語」と称され、それがいつの間にか実在の堤中納言(藤原兼輔)に関連づけられて考えられ、その結果堤中納言物語となったなどの様々な説があります。
(「虫愛づる姫君」について)
一説には「蜂飼大臣」と称された太政大臣・藤原宗輔とその娘がモデルであるとも言われています。
姫君は人工的なものを嫌います。そのためお化粧もせず、当時は一般的だったお歯黒もしません。また根源的なものを重視して、枝葉末節的な事を軽視します。そこには仏教的な輪廻転生の思想が息づいています。その様子を邸に入り込んだ風流な男が覗いて、歌を詠みかけるのですが、……
作者、編者は不詳です。十編の短編物語および一編の断片からなりますが、成立年代や筆者はそれぞれ異なっていて、遅いものは十三世紀以後の作品と考えられています。
十編の物語の中のいずれにも「堤中納言」という人物は登場せず、この表題が何に由来するものなのかは不明です。複数の物語をばらけないように包んでおいたため「つつみの物語」と称され、それがいつの間にか実在の堤中納言(藤原兼輔)に関連づけられて考えられ、その結果堤中納言物語となったなどの様々な説があります。
(「虫愛づる姫君」について)
一説には「蜂飼大臣」と称された太政大臣・藤原宗輔とその娘がモデルであるとも言われています。
姫君は人工的なものを嫌います。そのためお化粧もせず、当時は一般的だったお歯黒もしません。また根源的なものを重視して、枝葉末節的な事を軽視します。そこには仏教的な輪廻転生の思想が息づいています。その様子を邸に入り込んだ風流な男が覗いて、歌を詠みかけるのですが、……

底本
金子彦二郎 校註(尾上八郎 解題『竹取物語・伊勢物語・大和物語・浜松中納言物語・無名草子・とりかへばや物語・堤中納言物語』
〈校註日本文学大系〉2 国民図書株式会社 1925.6.23)