イワン・イリッチの死

文豪トルストイ五十八歳の時の恐るべき短篇。

この古典教養文庫版の「イワン・イリッチの死」には、次のような特長があります。

  1. 現在では使われない言い回しや言葉は、現在普通に使われる言葉に置き換えました。現代人には意味の取りにくい文は、平易な文に書きなおしました。

  2. 原文で触れられた場所、人物、絵画などを中心に、関連する画像を、著作権フリーのものにかぎって、いくつか挿入しましたので、より興味深く読み進めることができます。

  3. わかりにくい言葉や、登場人物、でき事、作品などについての適切な注を、割り注の形で入れてありますので、本文の理解が深まります。これは原訳書にあったものに、編集者が適宜加えました。

  4. 人名・地名は、現在通常に使われている表記に変更しました。

イワン・イリッチの死について

(冒頭部分からの抜粋)

「諸君!」と彼は言った。「イワン・イリッチが死んだよ。」
「へえ?」
「ほら、読んで見たまえ。」まだインキの香のする新しい新聞をさしのべながら、彼はフョードル・ワシーリエヴィチにそう言った。黒い枠の中には次のように印刷してあった。
…………
この訃報を聞いたすべての人は、この死のために生ずる勤務上の異動や変化を、さまざまに胸のうちで想像したが、なおそのほかに、親しい知人の死なる事実そのものが、訃報に接するすべての人の心中に、『死んだのはおれではなくてあの男だ』という、いつも変わらぬあの悦びの情を呼びさましたのである。
『まあ、どうだ! 死んじまった。だが、おれはこの通りぴんぴんしてるぞ』一人一人の者がこう考え、あるいはこう感じた。しかし、イワン・イリッチの親しい知人、いわゆる親友たちは、これから退屈きわまる礼儀上の義務を果たして、告別式にも列席したり、未亡人のところへ慰問にも行ったりしなければならない、というようなことをその際われにもあらず自然と考えずにはいられなかった。
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改版履歴

2017-10-01

第2版表紙を差し替えました。

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