ロシア文学翻訳の金字塔!訳者 米川正夫

米川正夫(1891−1965)は、岡山県に生まれました。1909年東京外国語大学ロシヤ語本科に入学、旧友の中村白葉などとともに『露西亜文学』を創刊します。1914年処女出版として新潮文庫からドストエフスキーの「白痴」を刊行開始しますが、この時は第四巻で中断の憂き目をみます。
その後幾つかの職を経験しながらも、1929年に白葉とともにトルストイ全集を岩波書店から刊行します。1935年の「罪と罰」を訳し、ドストエフスキーの5大長編をすべて訳し終わりました。
戦後は、個人訳による「トルストイ全集」(全23巻)と「ドストエフスキー全集」(全18巻)を刊行しました。
ドストエフスキーが日本にこれほど受け入れられたのは、この米川正夫による業績によるところが大きいと言われます。まさに金字塔と言えるでしょう。たとえば、小林秀雄はドストエフスキーについての評論を数多く書いていますが、そこに引用されているドストエフスキーはすべてが米川正夫のものによっています。また三島由紀夫の「仮面の告白」の冒頭引用されている、「カラマーゾフの兄弟」のドミートリーによる「熱烈なる心の懺悔」もまた米川訳によっています。

米川正夫訳の作品